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2013年08月31日

解体近所

通称、ってか私が「軍曹」って呼んでるオッサンから電話がありました。
滅多に電話などしない人なので、要件を聞いたところ、
「今朝、鹿が穫れた。Mさんのところで解体するから、行ってみろ」
ってことでした。
私が、カフェバスで鹿肉料理を出したいって言っていたものだから、そのためには、まず解体するところから勉強しろって有り難い配慮です。(汗)
鹿を穫るのは基本軍曹なんですが、一人では捌ききれないので、「捌ける人」に獲物を託して捌いてもらいます。鹿にしろ、猪にしろ、穫るのは簡単と言えないまでも、大変なのは、その後の処理なんですね。
食べない限り、いわば巨大な生ゴミなわけで、処理が面倒な人は、穴を掘って埋めちゃったりします。
軍曹は、代々猟師なので、穫ったものを捨てる事に酷くて抵抗があるようです。
害獣の駆除だけで殺して埋めちゃうのは、「殺戮だ」って。
なので、軍曹は出来るだけ、きれいに絞めて食肉として利用しています。
そういう繋がりで、Mさんの包丁さばきを見に行く事になりました。

訪ねていった私の前に現れたMさんの出で立ちは、シャツとステテコという、けっこうパンチが効いたスタイルでした。
おまけに歯並びもなかなかワイルドで、田舎にあってもかなりインパクトがあるタイプです。
噛み付かんばかりに吠えたる愛犬を避けて入った納屋で見せてもらったのがこれ。
鹿の前脚と後脚です。
「今朝穫れたやつ」とかで、川で捌いて血抜きをしたものとか。
ま、見方に拠れば、骨付きの鶏腿肉てーのと同じなんですが、薄暗い納屋で見るとなかなか印象深いです。
Mさんは、いつもなら愛犬相手だけであろうところ、一人でも観客が居るので、結構饒舌に解体を始められました。

まず、前脚と後脚では肉の付き方が違うとか。
そんなことはわかってると思いつつも、実際に現物を前に説明を受けると、リアルに納得できます。
腿肉であっても、前脚と後脚では同じような部位でも、見た目明らかに肉質が異なります。
一つの腿肉であっても、筋肉によってきれいに分かれていて、それぞれに微妙に肉質が違うし、結果料理の仕方も違ってきます。
試しに、大きめの骨付き鶏腿肉を捌いてみるとはっきりしますね。
脂肪がかかっている部分、ピンク色の大きな筋肉、赤みのやや硬い筋肉、筋など、鶏肉であれば一緒に調理してしまうところだけど、鹿となるとそれぞれがデカイし、繊細さを要求される肉質なので、部位ごとに最適な料理をすることが理想です。

肉というのはつまりは筋肉なんですが、いくつかのブロックに分かれていて、それぞれ筋肉を保護する膜に覆われています。筋肉の端は、骨や別の筋肉にくっついて固定されますが、それが腱です。この腱と膜をその都度取り除きながら、ブロックごとに「取り外して」いきます。腱の部分は切るしか無いですが、手で外せる部分も多いです。Mさんは、慣れた手つきで、筋肉と筋肉の間を素手で裂いていきます。
腱を多く含んだ部位は、いわゆる「すじ肉」になりますが、この部位はやはり煮込むと良い出汁が出て、しかも柔らかくなります。
腿の中で最も大きなブロックは、色が他と較べて薄いです。Mさんいわく、「この部位は味が淡白」とか。
こういう微妙な肉質は、ハムを手作りする折りにも感じています。こういう肉質を見て料理をしていかないと、期待通りのものにはならないです。

こんな具合にきれいに分解されました。
まさに、分解です。再び繋ぎ合わせれば、元に戻せそうな感じ。
各部位の料理方法なども伝授していただきました。
最後に、どれでも欲しいものを持って帰れと言われたので、ローストかハム用に大きな部位と、焼き肉用に脂身が絡んだ部位、それに煮込み用に小さめの部位をもらいました。
さて、鹿肉料理の情報を集めねば。

ちなみに、Mさん、1年程前に「肉アレルギ」が発症したのだとか。
それまで人一倍肉を食べていて、こんな解体までやっているのに、なんとも「皮肉」な。
なので、解体した肉はすべて人にあげます。
鹿肉の仕入れルートが出来そうです。

投稿者 aw@bitlog : 2013年08月31日 20:56

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コメント

いやいや、なんとも贅沢な仕入先ですね。
旨そうで旨そうでたまらないです。
ハムいいですね。テレビでヨーロッパの住宅かな、塩漬けだか燻製だか天井からぶら下がってる画をみますよ。

投稿者 tamami : 2013年09月01日 21:51

薫製はやりたいですね。
今回は設備がないので、薫製はなし。
量の関係で、ハムもやめて、ローストと煮込みと焼き肉の試作です。
今まさに作っています。

投稿者 aw : 2013年09月01日 23:22

贅沢なことやのう(^_^)/
しかし、これは都会向けメニューってことはない?
周辺の人は、みんな軍曹からのお裾分けを食べているとか?

投稿者 Anonymous : 2013年09月02日 09:53

軍曹は、鹿を穫る事が楽しみで、料理はおまけです。
今朝、いつも文句ばかりの軍曹に、作ったしぐれ煮を食べてもらったら、「これなら金取れる」ってOKでました。
ちなみに、鹿肉など野生の肉を食べる人は、田舎でも限られています。
大抵の人は、鹿肉の料理方法も知らないし、毛嫌いする人のほうが多いです。
鹿は「害獣」って意識が強いようです。

投稿者 aw : 2013年09月02日 14:16

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