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2012年05月23日

怒濤のエンジン組み上げ

さて、ここ数日、BAJAのエンジンを少しずつ組み上げていました。
大まかの順序は以下の通り。

1日目:シリンダーの組み付け
2日目:ヘッドの組み付け
3日目:カムスプロケ、ヘッドカバーその他の部品の組み付け

なぜ3日に分けるかというと、新しいガスケットが馴染んでから、トルクをかけ直す為です。

【1日目:シリンダーの組み付け】

腰上を外されているエンジンはこんな状態。
シリンダーの穴がぽっかりと空いているので、異物の混入を避けるために、フタをしています。
それでも完全ではないので、ずーっと気になります。
キャブに続くインシュレーターにもラップでフタをしています。
エンジンやキャブ内部が、直接空気に触れることを避ける意味もあります。
因みに、改造車でフィルターが露出したものなどがありますが、直接外気た湿気がキャブやエンジン内部に入るので、長期保存時、内部に錆が発生しやすいそうです。

シリンダー部の組み付け前に、まずピストンをシリンダーにセットしておきます。
多気筒エンジンじゃ無理ですけど、シングルエンジンだと、この方法の方がやりやすそうです。
ピストンピンも途中まで嵌めておきます。
最初、後からピストンピンを入れようとして上手くいかず、この方法を思い付きました。
コンロッドの穴には、何となくするりと入ってしまいました。
ちょっと手間取ったのがピストンピンクリップですが、それもなんとか落とさずに嵌めることができました。

無事シリンダーが嵌り、ボルトで規定トルクに締め込みます。
ガスケットには、両面に液体ガスケットを薄く塗布しています。
付けなくてもいいようですが、念のためです。
ボルトは、付いていた場所を記した袋に入れて管理しました。

無事シリンダーが組み上がりました。
これで、翌日、規定トルクで締め直します。

【2日目:シリンダーヘッドの組み付け】

シリンダーヘッドのの組み付けは、比較的イージーです。
やはり、ガスケットの両面に薄く液体ガスケットをを塗布しています。
果たして、良いのか悪いのか・・・(汗)
これも取り付けボルトを規定トルクで締め込んで1日置きます。
カムチェーン側にある小さめのボルトはトルクレンチが使えないので、ボルトの頭に付けた印を頼りに締め込みます。こちらは大きなトルクは掛からないはずなので、トルクはボルトの大きさ相応です。

【3日目:カムスプロケ、ヘッドカバーその他の組み付け】

カムチェーン、カムススプロケットの組み付けは殊の外慎重になります。
まず、圧縮上死点の確認です。
これがすべての作業の基準点になります。
圧縮上死点は、ピストンが一番上に来て、バルブが閉じている状態です。
この状態では、バルブが押されていないので、バルブクリアランスが出来ます。
さて、この位置で、カムチェーンにカムスプロケを通し、さらにカムシャフトを・・・
って難しいやん!
で、また考えました。
う〜ん、予めカムシャフトは取り付けておいた方がいいのでは?
スプロケは固定せずフリーの状態にして置いて、カムチェーンも嵌めておきます。
カムチェーンが嵌ったカムスプロケは、シャフトに固定しているわけではなので、カムチェーンはユルユルです。
で、クランク側のチェーンを外れた状態にしておいて、圧縮上死点にセット。
その状態で、カムスプロケを規定の位置(分解時に写真に記録した位置)に合わせたままチェーンを引き上げます。これで、簡単にカムスプロケとチェーンを、規定の位置にセットできました。
この状態で、カムシャフトを固定します。
かんた〜ん!
カムシャフトの向きは、マニュアルの通り、カム山を上にしました。
ここまで来れば、山は越しました。

カムの山の部分には、アセンブリーオイルを塗っています。
この状態で、クランキングして動きをチェックします。
テンショナーを元に戻したり、その他エンジン内のボルトを規定トルクで締め込みます。
さて、ようやくカムカバーを乗せます。
カムカバーのガスケットには液体ガスケットを塗りません。
ここは、圧力は掛からないので、必要ないはず。
真ん中の大きなボルトを先に締めて、回りの小さなボルトを締めていきます。
エンジン関係のボルトを締めるときは、必ず全体に、対向方向で、2、3度に分けて締めていきます。

さて、エキパイも装着し、外観上は無事に組み上がりました。
オイルは、半分をバルブのキャップから入れ、ヘッド回りからオイルを落としてやります。
バルブクリアランスもチェックします。
とりあえず、MAXのクリアランスで様子を見ようと思ったら、どれもMAXでした。(汗)
さて、チョークを引いてキック!
なんと、2、3回のキックで事もなくエンジン始動!
排気の煙は僅かに出ましたが、すぐに消えました。
一度エンジン停止してかけ直しても、煙は出ません。
が、エンジン前部より派手に煙がーーーー!
しかも、オイルの噴水がーーーーー!
やっちゃったかーーーー?
噴水の元を見ると、オイルフィラーを外したまま・・・(恥)
あたりに、エンジンオイルを撒き散らしたものの、壊したわけでは無かったみたい。(汗)
再度エンジンをかけると、安定したアイドリングで回っていました。
とりあえず、無事動くことは確認できたので、明日バルブクリアランスを調整です。

さて、この記事を書こうと、参考書を見ていたら、「上死点を出すときは、かならず、反時計回りにクランキングするように・・・」
え〜っと、ずっと時計回りに回していました。
だ、大丈夫か?
明日の朝、オイル漏れ洩れだったら立ち直れないなぁ・・・。

【今回の10の反省点】

1.部品を交換したことを忘れて、余ったワッシャーに気が付いて慌てました。新旧の部品は予め差し替えて置くなど管理をするべきでした。

2.エンジンの塗装をすると、脱脂のためのパーツクリーナーや灯油が使えなくなって不便です。分解して塗装した場合は、熱処理をしてしっかり定着させた方がいいでしょう。

3.ピストンピンクリップの取り付けは、シミュレーションしておけば良かったです。場所が場所だけに、手間取ると焦ります。

4.後からオイル漏れをチェックしていると、液体ガスケットがはみ出ている箇所がありました。エンジン内部だとトラブルの原因になりかねないので、使用の是非は検討の余地ありです。

5.シリンダー部取り付けの際、載せておく木片のようなものを用意しておくと、コンロッドとの連結が容易だと思います。

6.クランクの逆回転を含め、クランク側のギアとチェーンの噛み合いや、チェーンテンショナーの具合を慎重に考慮すべきでした。

7.シリンダー部を組み付けるとき、馴染みを良くするために、ピストンの動きを確認しながらすることを怠りました。

8.ヘッドカバーの取り付けボルトは、長さが異なるものが3種類ほどあります。予め取り付け位置を記しておいた方が、組み付けがスムーズに運びます。

9.バルブステムシールを外す折、バルブステムガイドの先端を傷つけてしまいました。金属を傷つけないように、何か噛ませるか、樹脂製の道具で外せば良かったです。

10.エンジン始動の時は、フィラーキャップの閉め忘れに注意。

【クランク逆回転】

気になって、調べたところ、こんな記事を見つけました。
やはり、時計回りに回すのは、かなり良くないことのようです。
ああ、心配だ・・・。

【初めての腰上分解&組み上げ所感】
さすがにエンジンの整備はプロに任せようと心に決めていたのに、
成り行きで、やってしまいました。
やってみると、思ったよりも簡単だったと思う反面、
クランクケースにボルトを落としたり、組み上げにミスがあったりすると、
随分と面倒なことになります。
なので、部品管理や、作業のための準備はしっかりやって、丁寧に作業を進めないとダメなんですが、それが一番面倒です。
それでも、エンジン内部の状況を把握できたのは大きな収穫です。
今後エンジンの不調があった場合でも、原因を想像しやすいです。
仮に、組み付けのミスをして壊してしまったとしても、得るものはあるでしょう。
出来れば、最初は、壊してもいいくらいのもの、もしくは、練習用のエンジンでやってみるのがいいですね。
ある程度構造を把握しておけば、やってはいけないこと、やっていいことの判断が出来ると思います。
1度やってみると要領がわかってくるので、次はもう少しスムーズに出来るでしょう。
嵌りそうです。
さて、次の患者さんは、トリッカーだな。

投稿者 aw@bitlog : 2012年05月23日 17:31

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コメント

RFVCはロッカーアームなどの構造&セッティングがシビアなのかと思ってましたが、そうでもないんですな。

投稿者 Nylaicanai : 2012年05月23日 20:46

リンクのアームが増えるので、部品点数は増えますが、調整箇所が増えるということはないです。
ただ、エンジンの分解は、見えないところで気を使いますね。

投稿者 aw : 2012年05月23日 21:03

基本的には反時計回りですが
大丈夫ですよ>時計回り
カムチェーンテンショナーを張った状態で派手に回すと
テンショナーを損傷する恐れはありますが。

時計回りに回してもチェーンが一コマ飛ぶことはあり得ませんので
ピストンでバルブを突き上げるなんてあり得ません。

投稿者 1京都 : 2012年05月24日 11:00

大丈夫ですか!
気になってあれこれ調べていたんですが、ダメっていう割りには、どうダメなのかって記事が少なくて、確証を持てませんでした。
エンジンは、極めて安定して回っているし、変な異音もないし、今のところは、オイル漏れも見あたりません。
調子に乗って、トリッカーも開きます。
ヘッドのみの予定ですが。

投稿者 aw : 2012年05月24日 11:19

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