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2005年08月10日

愛チャリ、「鶴号」長期使用レポート!

DSC00897.JPG

東京散歩では、大活躍の愛チャリ、「鶴号」です。
正式には、「PEUGEOT Pacific18」と言います。
あれは確か、2000年頃、たまたま通りがかったサイクルショップで一目惚れ。
いつもなら入念なリサーチの後、慎重に構えるところが、
仕事のストレスからか、発作的に買ってしまった物です。
どノーマルですが、約5年間の使用を経て、レポートなどをまとめてみました。
自転車マニアのディープな世界には縁のない、「ずぶの」素人なので、マニアな人には価値無しです。(^_^;
これから買おうかと言う人には、場合によっては参考になる、あるいは、妨げになるかも知れません。(^_^;

そもそもこの自転車の設計とデザインは、ドイツのR&M(ライズ&ミューラー)という会社のもので、販売代理店によって、本家のものは、「BD-1」と呼ばれたりします。
(なにげに、語感がいいですね>R&M)
ダルムシュダット工科大学在籍中のマーカス・ライズとハイコ・ミューラーが自宅のガレージを改造し、軽量コンパクトな自転車を設計したのが始まりだそうです。
「PEUGEOT」というのは、たぶん、販売代理店がPEUGEOTからブランドの使用権を得たものと思われます。
「Pacific」は、製造を請け負っている台湾のメーカーの名前です。
「18」は、18インチっつーことなんでしょね。
BD-1とは、使われているパーツが違って、若干値段も安めです。
より乗りやすくするためにハンドルが近くなっている事などの違いもあります。
Pacific>気軽
BD-1>こだわり派
ってことでしょう。たぶん。

【特徴】
この自転車の特徴は、総アルミの軽量ボディーと、特異なサス構造を利用した折りたたみ方式です。
普通は、ボディーの真ん中で折れるのが一般的な折りたたみ式自転車の構造ですが、
サスの支点に沿って車輪を回転させて折りたたむ構造は、強度的に優れているだけでなく、ユニーク&スマートです。
中折り構造では、どうしても接合部の強度を出す必要があるので、重量が重くなりがちですが、この自転車は、総重量も10.5kgと、軽量に収まっています。
さらに、リアのスイングアームを長くしても、折りたたんだ状態をコンパクトに出来るため、ホイールベースを長く設定出来たため、走行安定性に優れます。
因みに、私の2000年モデルに関するレポートですので、最新モデルでは解決済みのものもあると思います。

【よさげなところ】
●まずはユニークな折りたたみ構造とそれからくるデザインの良さでしょう。これは唯一無二のもの。
●やっぱり、軽い。いつもマンションの2階まで、階段を抱えて上がるんですが、大してくになりません。軽さは正義です。
●いつも折りたたむわけではないですが、部屋の中に保管している都合上、ハンドルを畳むだけでもずいぶんコンパクトになって場所をとりません。あと、ポタリングに出かけて頑張りすぎたときや、天気が悪くなったとき、折りたたんで、電車やタクシーを使って、何食わぬ顔で帰宅出来ます。(^_^;
●サス付きなので、タイヤの空気圧を高めに設定しても乗り心地が悪化しません。空気圧を上げると、転がり抵抗が減るので、非常に軽く漕ぐことができます。
●クルマに積んでいると、とても行動半径が広がります。ビバ!6輪生活。
●ハンドルに付いた変速ダイヤルは、手を離す必要が無くて安全かつイージー。手を離せるほどの安定感が無いというのもありますが。(^_^;
●ホイールベースが長いので、小径ホイール車の割りに走行が安定しています。

【イマイチなところ】
●折りたたみは、手順通りやらないと上手くいきません。オーナーは問題ないけど、初めてさわる人は戸惑います。人にやらせると壊されそうで怖い(汗)
●手放しが出来るような安定性はありません。曲がるときにやや切れ込む様なくせがあります。ロングホイールベースのおかげで「小径ホイールの割に安定がある」のは事実ですが、小径ホイール故の不安定さやフロント荷重故の癖があるのは、事実です。はっきり言って、自転車に乗り慣れない人にとっては、とっても乗りにくい代物とも言えます。
●折りたたむとき、ギアを1番外側に切り替えないと、チェーンの収まりが悪く、外れやすくなります。
●フロントギアの軸を押さえるリングが、緩みやすいようです。
●小径ホイールの弱点だけど、空気が抜けやすいです。携帯エアーポンプ必須!
●サス回り、とくにリアの剛性がイマイチか。構造上仕方がない部分だけど、リア・スイングアームの回転軸は、若干斜めになっていることは、微妙に走安性に影響していると想像します。
●革サドルは、水分に弱く、経年変化で形が崩れてきます。海老の逆ぞりのように反っくり返ったサドルをの目撃あり!
●畳んだときに、部品同士が干渉して傷が付くことがある。そういった部分にはプロテクターやアタッチメントがほしい。(私はずぼらなので傷つき放題・・・)
●トップギアのギア比が低くて、もう1段ほしくなります。改良されて9段になっているモデルもあるようです。

【イカンところ】
工作精度がイマイチ安定していない箇所がある。サドルは、きちんとセンターが出ていないし、フロントスイングアームの回転軸の精度にもバラツキがあるようです。
小径ホイール車は、特に車体のバランスは大事なので、精度や強度にはこだわって欲しいところ。

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シマノの8段変速器。
ガイドが長いのは、折りたたみの時に、チェーンを保持するためです。
変速動作は滑らかです。

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もっとも特徴的なフロントサスペンション。
折りたたみ時は、上部のレバーを押すのみで簡単に切り離されます。
スプリングの中は、ウレタンゴム。
これを弄って、サスを固める人もいるようです。
走行中は、このサスが伸縮して、十分に役目を果たしていることがわかります。
「おっ、頑張ってる、頑張ってる」ッテカンジ。
メカニカルな美しさもあり、ユニーク機械好きにはたまりません。

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リアサスペンション。
シリコンゴム製で、緑、赤、黄色の3種類の固さが異なるものを選べます。
黄色の一番柔らかいのを試しましたが、柔らかすぎで走安性のバランスが悪く感じました。
左のレバーを外側にずらすと、これまたあっさり切り離されます。
ただし、レバー自体の固定が甘いので、レバーごと動くことあり。要改善を望みます。

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PEUGEOTブランド専用の皮サドル。
当初は明るいベージュ色だったのが、使い込むほどにいい感じに飴色になってきます。
お洒落な感じが好みですが、製品にバラツキがあってセンターがずれていることが多いようです。買う方は要注意!
水分を吸うと強度が落ちて型くずれしてきます。
マニアには、あまり評判の芳しくない部品ですが、
私は、モダンな車体と、良い対比になってお洒落だと思います。
ただし、幅が広くて固いことや、バネのサスペンションの乗り味は、合わないようで、
近々交換したいと思っています。

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フロントギアの軸を押さえるリングは、通常両側に付くらしいですが、設計の都合からかギア側のみしか付いていません。そのために緩みが出やすいようで、2台とも症状が出ました。ペダルの踏み心地に違和感を感じたらここを疑いましょう。

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フロントギアは、ナイロンのガイドでサンドイッチされ、チェーンの脱落防止とズボンの裾汚れ防止に機能します。上部の赤いバーは、折りたたみ時の脱落防止ですが、少々強度が足りないようで、チェーン脱落時には、根本から少しゆがみます。

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変速操作は、ハンドル一体型のダイヤル方式で、走行中に手を離さなくて済みます。
操作感もなかなかスムーズで良好。
ダイヤル式は、Pacificのみで、BD-1はレバー式だったように記憶します。

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これは、しばらくして買い足したグレーカラーのもの。
マイナーチェンジ以外に、ロットによる部品の違いもあるようです。

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どうしても、もう1台グレーが欲しくなって、後から追加しました。
ストレス解消のお買い物ではないかと。(^_^;
言い訳としては、車載用。ビバ!6輪生活。
シックな雰囲気がお気に入りです。
名前は「亀」号。シックではないですね。(^_^;
2台合わせて「鶴と亀」。
長寿に乾杯!

【折りたたみ手順】

折りたたむ前に、変速機を操作して、チェーンを一番外側(最も漕ぐのが重い位置)
にします。通常、止まる前の走行中に行います。
(ですよね?フツー。)
これは、折りたたんだときに、チェーンが外れにくい用にするための処置です。
そして、左側のペダルを一番下の位置します。
これは、折りたたんだときに、干渉しないようにするためのおまじないです。
このあと、折りたたみ操作に移ります。

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まず、フロントサス上部のレバーを押し下げて切り離し、フロントホイールを180度回転させます。

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同様に、リアサス付け根のレバーを操作してリアホイールを180度回転させます。

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サドルのレバーをゆるめて、一番低い位置に収納します。
サドルの軸は、突き抜けて、折りたたみ後のスタンドの役割を果たすため、
リアサスを回転させる場合は、必ずサドルを一定の高さに引き上げて、干渉しないようにしてやる必要があります。

DSC00910.jpg
最後に、ハンドルを畳んで完了!
ハンドルは、畳んだリアホールを押さえる役目もします。なるほど。

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2つのホイールと、突き抜けたサドルの軸の3点で自立します。
でも少しバランス悪いので、何とか立ってるレベル。

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上から見るとこんな感じ。
リアスイングアームの回転軸が斜めなのがわかります。
畳んだとき、最もハードに干渉するのは、フロントホイールのハブの固定レバーと、リアのハブの軸あたり。気になる人は、スポンジでも挟んだ方が良いかも知れません。

しかし、上手く考えた物です。
こうして写真で見ると難しそうですが、レバーの位置や操作の動線が良いため、馴れると10秒以下で出来るようになります。
私は、亀号をクルマに携帯して、必要なとき引っ張り出しますが、歩道でさっさと組み立てるのは楽しい仕事です。
稀に、変わった組み立て方の自転車を見ている人の視線が楽しいときもあります。(^_^;
唯一困るのが、チェーンが外れたとき。
収納をミスったり、何かの弾みで外れたときは、脱落防止バーが逆にじゃまになってなかなか嵌らないこともあります。

【なぜ、このデザインを魅力に思うのか?】

真横から見るとわかりますが、普通の自転車と違って、線が太めで、自転車よりも力強さがあります。しかも、通常のトラスト構造(三角形を基本とした構造物の骨組み)とは異なり、リアスイングアームは、レーサータイプのバイクののようで、フロントサスも、異形バイクのelfを彷彿させるユニークさで、フレームの方向は、ハンドルと同じく、「前傾」しています。
全体として、類い希な「前傾スタイル」のデザインにまとまっています。
しかし、これだけ特異な形ながら、不思議と落ち着いて見えます。
なぜか?
ひとつは、最も目立つ太いボディーのパイプフレームが水平で低い位置にあるため、低重心の安定感を持たせることに役立っています。
もう一つは、一見バラバラな、ハンドル、フロントサスフレームの線の方向が、ほぼ並行に並んで、整理されて見えます。
これらの巧みなデザイン処理は、これだけ特異なメカを持ちながら、折りたたみ自転車の「定番」的評価を築く一因になっていると思われます。

ユニークな折りたたみ構造とデザイン>メカ好きに、デザイン好きに。
高い携帯性>保管の容易さ、気軽なポタリング派に。
しっかりとした作りと走行安定性>本格的なツーリンストに。
と言った具合に、とても間口の広いプロダクトであるため、ユーザーの数も多いです。
少々「無理」をしている箇所が無いとは言えませんが、
機能とスタイルが素晴らしいデザインに結実した良いプロダクトだと思います。
高額な自転車にある芸術品的なものではありませんが、素晴らしいアイデアを、量産品として高い完成度で実現した製品です。
えらいぞ!ライズとミューラー!

【オススメリンク】
「PEUGEOT Pacific-18 改造レポート」
タイトル通りの濃〜いサイトです。

「Bicycle」
こちらも同様。がんばりやさんです。

「おのひろき おんらいん」
自転車、とくにBD-1の草分け的超有名サイト。
ほとんどの自転車サイトにつながるのでは?


【関連エントリー】
「チャリのお供」

投稿者 aw@bitlog : 2005年08月10日 17:08

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BD-1の長所として(ここが素晴らしいと... [続きを読む]

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コメント

TBありがとうございました。
とても事細かに解析されてますね。とても興味深く読ませていただきました。
私はどうも短文で省略してばかりで真似が出来ないのですがとてもこれから小径車に乗りたいと思っている方にはとても参考になる記事だと思います。
私のは自分に合わせて、且つ壊れたところの部品を替えていったらフレーム以外が全て総交換してしまいました。

投稿者 gan : 2005年08月11日 18:18

>ganさま

コメントありがとうございます。
私は、あまり弄ることなく、フツーに乗るだけなので、
これから乗ろうという方の参考になればと思いました。
なかなかユニークなのに乗られてますね。
またおじゃまさせて頂きます。

投稿者 aw : 2005年08月11日 21:22

TBありがとうございます。
Pacific18はやっぱりお洒落ですねー。
BD−1を買う前にこの記事を見てたらこっちを買ってたかも(笑)
二台もお持ちで羨ましい限りです。

投稿者 da-han : 2005年08月22日 22:18

da-hanさん、ドーモです。
お気楽に乗るには、Pacific18は良いです。

それにしても、da-hanさんのblogは、雰囲気がありますね。
参考にさせて頂きます。

投稿者 aw : 2005年08月23日 01:41