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2010年04月12日

1号の凹んだ思いで〜初めての裁判〜

凹んだ1号を見て、実家の家族はフツーに驚きましたが、まぁ人間のほうは何ともないので、「次からは、列車で帰るように」との注文のみで終わりました。
ところで、当然ながら、東京に戻るのも、この凹んだままの状態です。
右のミラーは無いので、進路変更の場合は、「目視』です。
いやぁ〜、ミラー、大事っすね。
ないと、結構不便です。(笑)
事故の後、この状態で走るというと、警官は、何やら事故を起こした事を証明するような紙切れをくれた気がしますが、果たして、これが有効かどうか。
ともかく、無事に東京に戻る事が出来て、行きつけのディーラーに行きました。

「うわっ、どうしたんですかぁ」

とは、担当者のSさん。
とりあえず、預けて見積もりをもらうことになりましたが、
その結果は、Sさんの見立ての通り、「直る」でした。
実際のところ、一部シャシーにも及んでいるものの、ゆがみ等が生じるレベルではないので、
ほぼ問題なく直るとのことでした。
後は、相手の保険会社との話です。

(これからの事はうつろな記憶でしかないので、不正確かもしれません)
それから間もなくしてでしょうか、相手側の保管会社から電話がありました。
たぶん、私が事故の状況を説明したでしょうか。
ひょっとすると、陳謝の言葉があったかも知れません。
でも、はっきりと覚えているのは、次の言葉。

「走行中の事故ですので、10対0ということはありません。」

たしか、過失割合の話になった時でしょう。
相手の女性オペレーターは、事務的な声でそう言いました。

(おいおい、話が違うでぇ、)
(相手の運転手は現場で、自分の非を認めてるやろぉ。)

いくら仕事とは言え、「走行中だから、10:0はない」ってーのはウソです。
仮にその方向で進めたいにしても、ウソを言っちゃイカンでしょう。
そこで、どう続けたかどうか記憶が定かではありませんが、
とにかく、相手のドライバーに連絡を取ることにしました。
ところが、相手の自宅に電話しても、ずーっと留守電。
さて、どう連絡を付けたたかも忘れましたが、
先方の会社(相手は、輸送会社のドライバーでした)に電話しました。
たしか、ここでも、素直に謝れる事はなかったと記憶します。
どうやら、相手のドライバーは、きちんと事情を話していないような感じ?
ここからの細かな経緯は思い出せないですが、
結局、全面的な非を認めないことから、あれこれ紛争解決への長い道が始まりました。

交通事故などの紛争はありがちですが、いきなり裁判というような具合には行きません。
内容証明でこちらの要求を伝えたり、
交通事故紛争処理センターのような第三者機関で仲裁をしてもらったり、
ある程度手順を踏んで行きます。
でも、この段に及んで、事故当時の判断が甘かった事に気が付きます。
怪我をするほどの事故では無かったので、物損で済ませていたのですが、
これがダメでした。
交通事故紛争処理センターで取り扱う案件は、人身事故のみ
自動車保険の扱いも、人身と物損ではまったく異なります。
ウソでも、いいから「首が痛い」て言っておけば、裁判まで進むほどの苦労はしなかったでしょう。

結局、第三者による紛争処理は難しいってことで、裁判の選択しかありませんでした。
初めての裁判だったので、色々調べましたね。
簡易裁判、少額訴訟、地方裁判・・・。
クルマの修理見積もりは70万以上。
ホイール2本とタイヤ4本、代車代など合わせると、当時の簡易裁判の請求金額の上限を超したので、地方裁判の選択となしました。
しかも、恐ろしい事に、弁護士なし!
初めての裁判が地方裁判で、しかも本人訴訟という無謀さ。(笑)
自分の自動車保険では、一応、「弁護士特約」に入ってましたが、それを使わなかった理由は・・・何だっけ?(笑)

もう一つ、今回の紛争の困難さは、「評価損」を認めさせようというものです。
1号は、購入後1年半ほどで、自分的には、まだまだきれいな状態と思って乗っていました。
今回の事故では、いわゆる「事故車」の扱いになってしまうので、クルマの評価額はかなり下がります。
仮に、きれいに直ったとしても、中古車として売り出そうとすると、10〜20万くらい低く査定されると聞きます。
この評価損の請求は当然と言う見方もありますが、一方で、それを認めない考え方もあります。
つまり、修理して道具がきちんと使えるようになった以上、それ以上の請求は過剰であるという考えです。
あと、売りに出すまで、実際の損金額がはっきりしないからとも言われます。
私も、その理屈はわかります。
業務車両なら、その考えで全く依存はないですが、自家用車は別じゃないですかね。
自家用車の場合は、実用機能のみで買っているわけではないですから。
事故で、微妙に調子が狂う事だって少なくないし、
現時点で、評価が下がっている訳ですからね。
そもそも、新車を買う時に、贅沢品扱いの「取得税」を取られているわけだから、
それらしく扱うのがスジではないか、ってーのが私考えでした。
この点は、案件によって様々のようですし、
「評価損」を認めない判決もあるようですが、
いままでの、全く認めない方向からは変わって来ているようです。
まぁ、すっきり非を認めない相手に腹が立ったってーのもありますし、
一丁チャレンジしたかったってーのもあります。
一応弁護士を探して、評価損の話を弁護したものの、
どうもあまり乗り気じゃないみたいなんですね。
しかも、過失割合も100%を約束出来ないみたいな事言うし。
じゃぁ、自分でやります、みたいな流れだったと思います。

裁判は八王子地裁でしたね。
まずは、訴状の書類をもらいに行って、関連する証拠書類などを集めました。
訴状は、今回の敷金返還の物と違って、もっと「本格的」な感じです。
実は、たまたま夏に規制した折り、小学校の同窓会がありまして、
その時に、同級生のF君が司法書士になっている事を聞いたので、何気に相談していました。
持つべきものは、友達ですね。彼は、訴状の作成を手伝ってくれました。
私が書いた訴状の下書きを校正してくれたわけですが、これは百人力でしたね。
他の証拠は、事故車両(1号)写真くらいですね。
ただし、判例に関しては今後の為にも調べておく必要があったので、国会図書館に通って「判例集」を探しました。
本当は、事故を目撃した人が居れば話が早いんですが、それを今から探すのは無理。
高速のチケットなども用意しておきました。
もし、相手が、私の速度超過を言って来た時に、平均速度がいかに遅かったかを示す為にです。
そんなわけで、何点かの証拠書類と訴状を八王子地裁にに送りました。

こうして、原告から訴状を出された相手は、訴状に応える形で「答弁書」なるものを返します。
「原告はあんな事を言ってますが、被告のいい分はこうですよ」って所です。
当然、私のところにも写しが送られて来ます。
双方は、訴状と答弁書を元に、裁判を争うことになります。
で、裁判所から送られて来た相手の答弁書を見てびっくりです。
当時は、私もうぶでしたから(笑)、「ほぉー裁判となるとこうなるんだ」
とひたすら感心しました。
相手弁護士の答弁によると、私は、走行車線と追い越し車線をジグザグに行き来して走行していたとかで、
ドライバーもそれを目撃していたとか。
で、ドライバーが追い越し車線から走行車線に入ろうとした時に、走行車線に車線変更して、猛スピード飛ばして来た私のクルマと接触した、ってーのが事故の原因になっていました。
とんだ、無法ドライバーじゃないですか。(笑)

まったく、びっくりです。
裁判というのはこういうものなんですね。
相手側の証拠資料は、現場の走行写真などが貼ってあって、何やら解説していますが、正直どうでもいいような内容
です。
もっともらしく調べた風ですが、今回の事故とはあまり関連がなさそうなもので、資料の多さを見せたかったみたい。(笑)
まぁ、びっくりばかりもしておられません。
相手の答弁に対して、「そりゃウソだ」って言い切れる説明やら証拠やらを揃えておかねばなりません。
で、まず、事実の洗い直しから始めました。
で、相手が言うような速度で事故が起きるかどうかを検証しました。
といっても、事故現場は遠いし、実際に検証なんて出来ません。
わかっているのは、接触した場所です。
これは、現場で事故処理を行った警官によっても確認されていることだし、1号の写真もあります。
当たったのは、1号の右後端とトラックの左前端です。
トラックのドライバーが、左後方を確認して、もし、安全と思われる距離に1号が居たなら、
私は、200km/h近い速度で走行車線を走らないとこの位置に当たりません。
また、トラック後方から近づいて、トラックが進路変更を始める直前に私が車線変更して無理矢理走行車線を突っ走ったとしても、90km/hからロケットのような急加速をしないと、やっぱり無理。
悲しいかな、1号はそんなスーパーカーではありません。
それに、最初に当たったであろう傷が、丸いんです。
猛スピードの私のクルマとトラックが接触したら、線状痕になるはずです。
この丸い傷は、真横から当たっています。
この時点では、十分に自分の意見を認めてもられると思っていました。

さて、裁判の日。
裁判所ってーのは、実際お硬い印象は拭えませんが、
その気持ちを楽にしてくれるのが、書記官の存在です。
書記官は、いわば、裁判所に勤める公務員のようなものだそうですが、彼らに威圧感はありません。
むしろ、ずっとフレンドリー。
書類の不備をにこやかに指摘してくれたり、手続きの説明をしてくれたり、
私などのような裁判ビギナーには、とてもありがたい存在です。
まずは、その書記官に呼ばれて、審議をする部屋に入ったかと思います。
その時、相手方の代理人も来ていました。
つまり、弁護士です。しかも2人も来ています。
それからの内容は良く覚えていませんが、たぶん、裁判官が、訴状と答弁書に目を通した後、和解勧告をした気がします。
で、被告原告が別々に裁判官と和解の条件について話しました。
まず呼ばれたのは、被告だったかな。
次に私が呼ばれて、和解の条件を出された気がします。
過失割合がどれほどだったか思い出せないけど、
絶対に忘れないことがあります。

「私なら、評価損など絶対に認めない」

この裁判官の言葉は、ショックでしたね。
しかも、「なぜ、ブレーキを踏まなかった?」
などとも言われる始末。
訴状には、「相手のクルマに後方を当てられたので、衝突までまったく相手のクルマが見えなかった」って書いていたのに。
どうやら、裁判官は、はなっから素人相手の裁判など真剣にやる気はないように見えました。
和解と言っても、私には選択肢が無い感じ。
別に、裁判所が正義の見方だなんて思ってはいなかったですが、この時の落胆具合は相当でした。
相手側の和解の条件は思い出せないですが、当日の和解は断念して、別の日に行う事になったと思います。
もう、家に帰っても茫然自失。
裁判の前に結審しちゃったようなものでしたからね。
そんな気持ちのまま、訴状を手伝ってくれたF君に結果を報告すると、
F君からは、憤りと励ましの返事が返ってきました。

「(そんな裁判官は)『世間知らずのバカヤロー』と笑い飛ばしてやってください」

この一言がどれほどありがたかったか。
他にも、強い気持ちで臨むようにとのアドバイスも受けました。
で、ふたたび、判例探し。
側方や後方からの衝突では、「100%過失を相手側に認める事が多い」などという判例を集めました。
二度目の調停では、もう開き直りましたね。
ダメなら、裁判に進もうって。
で、集めた証拠や判例を元に、丁寧に裁判官に説明しました。
最後になってようやく、私が本気だって事が伝わったのか、
相手は、100%の過失を認めるが、評価損の請求までは無理」との所まで来ました。
でも、考えたらそれ当たり前の話で、私的には大事なのは、評価損をどこまで認めるか、です。
結局、最後の最後まで粘って、僅かに4万円ほどの追加の条件を出してきました。
要求していた20万円ほどの評価損分には、はるかに及ばないですが、
このまま裁判に突入しても、メリットは少ないしリスクもある、という苦渋の選択です。

この紛争では、いい勉強になりました。
自分が当てられた事故では、可能な限り人身だと、後の処理が優位です。
不幸にして事故にあったら、可能な限り、証拠や証人を確保しましょう。映像や音声での記録も大切。
気合いの入らない裁判では、裁判官も、弁護士もけっこう適当です。
自分の評価に繋がらない裁判は和解させようとする裁判官は存在するし、
稼げない案件ので弁護士は、資料作りに手を抜きます。(笑)
それにしても、本人訴訟はとーっても精神的に疲れます。
ただし、結果を問わないなら、一度自分でやってみるのは非常に有意義
・・・な気もします。

投稿者 aw@bitlog : 2010年04月12日 12:23

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